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高齢者の賃金に関する新聞記事

65歳まで雇用 企業苦慮 義務化法成立 人件費増、新採用減懸念

65歳まで希望者全員の再雇用を企業に義務づける改正高年齢者雇用安定法が今国会で成立したことを受け、九州・山口の企業でも雇用・賃金制度の見直しに着手する動きが出てきた。再雇用制度をすでに導入済みの企業は多いが、年金の受給開始年齢の引き上げに伴い、継続雇用の希望者は今後増えるのが必至。人件費負担や若者の採用抑制を懸念する向きもある。

九州電力(福岡市)は定年後、65歳まで雇用する「シニア社員制度」を導入している。勤労意欲などの条件を定めつつも、「ほぼ希望者全員を再雇用している」といい、適用者は現在約150人に上る。

65歳まで働ける「エルダースタッフ」を設けている岩田屋三越(同)では、約100人が商品搬入などに従事。井筒屋(北九州市)やベスト電器(福岡市)も希望者をほぼ全員再雇用しているが、各社は「再雇用では報酬を下げるため、経営の影響は小さい」と話す。

ホームセンター運営のハンズマン(宮崎県都城市)は、再雇用の上限年齢を定めておらず、「70歳を超えて売り場を切り盛りしている販売員もいる」という。

64歳までの継続雇用制度を持つロイヤルホールディングス(福岡市)や長府製作所(山口県下関市)は、今回の法改正も踏まえ、来春から65歳に延ばす方針。

ただ、年金受給年齢は今後、段階的に引き上げられ、再雇用を求める社員は増えていくのが確実だ。

TOTO(北九州市)は、近く社内にワーキンググループを設け、賃金体系の見直しや業務効率化について検討を始める。現在、退職者の約半分を再雇用しており、最高65歳まで働けるが、「(法改正で)人件費の増加が予想され、影響を最小限に抑えたい」(同社)。昨年度に退職者の86%を再雇用した宇部興産(山口県宇部市)も、「雇用制度の見直しが必要」としている。

再雇用の義務化に戸惑いをみせる企業もある。

65歳までフルタイムで雇用する制度を2006年から導入している西日本鉄道(福岡市)は、過去の事故歴などを踏まえて運転手の再雇用を判断している。「交通事業者としては安全確保が大前提。法改正の細部が不明なため、雇用制度を見直すべきかはまだ見極めがつかない」と困惑ぎみだ。

福岡商工会議所の末吉紀雄会頭は29日の記者会見で、「企業の特性もあり、一律に強制するのは疑問。経営への影響も大きい。高齢者雇用も大事だが、若年層を積極的に採用する社会をつくるべきだ」と強調した。

〈改正高年齢者雇用安定法〉

定年後も希望者全員を65歳まで継続して雇用するよう企業に義務づける制度。施行は来年4月1日。厚生年金の受給開始年齢が2013年度から25年度にかけ、現状の60歳から段階的に65歳まで引き上げられるため、定年後に年金も賃金もない無収入状態を防ぐ狙いがある。

 図=改正高年齢者雇用安定法と厚生年金受給開始年齢引き上げのイメージ

 図=地場企業の定年後の高齢者雇用制度

[読売新聞社 2012年8月31日(金)]

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