もはや年金が頼りにならなくなる時代。
高齢者の賃金を実践的に提案する
(株)北見式賃金研究所 北見昌朗です。
65歳までの雇用義務化が法制化されました。そこで困るのは、高齢者の賃金の決定です。年金が60歳から支給されない時代が到来しましたので、中小企業は高齢者の賃金に関して、新たな問題に直面します。
中小企業としては、人件費のアップは避けたいものです。しかし、何ら対策を講じなければ、人件費アップは避けられそうにもありません。
経営者にしてみれば「国の年金制度の問題を、会社に押し付けられては困る」というのが本音でしょう。
(株)北見式賃金研究所の北見昌朗は、高齢者の賃金の問題を長年にわたって研究してきました。北見昌朗は、中小企業の社長の労務顧問です。その立場から、このサイトで、高齢者の賃金の決め方に関して実践的なノウハウを公開したいと思います。
“手取りの生活費”の確保という観点から、労使双方にとって最適な高齢者の賃金決定を提案します。
定年直前の社員の賃金総額の相場は?
高齢者の賃金の決め方は、それを論じる前に、そもそも現役世代(定年直前の59歳)がいくらの賃金をもらっているのかを調査しなければいけません。
その「賃金」とは「基本給」のことではありません。「賃金の総支給額」のことです。家族手当とか、住宅手当とか、時間外手当などを含んだ賃金のことです。
(株)北見式賃金研究所は、中小企業の賃金を集めて調査する「ズバリ! 実在賃金」を毎年作ってきました。
愛知県版のみならず、首都圏版、関西圏版、北海道版、福島県版、群馬県版、静岡県版、富山県版、福井県版などずらりと出来上がっています。
その見本のグラフをここに掲載します。
※このグラフは首都圏の中小企業の賃金の総額をプロットしたものです。横軸は年齢、縦軸は金額です。このグラフの上にあなたの会社のデータをプロットすれば、世間と比べて高いか低いかが一目瞭然。
手取りはいくらか?
定年直前の「賃金の総支給額」とともに気にしてほしいのは「手取りの賃金」です。というのは、暮らしの安定という観点からすれば、60代の収入は「会社からもらう賃金+賞与+年金+雇用保険の継続雇用給付」という4つで構成されているからです。
前述のグラフは、左側の縦軸が「賃金の総支給額」になっていますが、右側の縦軸は「手取りの賃金」になっています。社会保険料や税金などが2割あることを想定して 「賃金の総支給額」×0.8=「手取りの賃金」という算式により割り出しています。
このように「手取りベース」で考えることが、高齢者の賃金決定で重要な観点です。
年金の支給開始年齢の引き上げ
「昭和28年4月2日」の生まれは「平成25年度に60歳定年」を迎えます。そうです。この年代から、年金が60歳から支給されなくなります。いわゆる“年金の空白”の始まりです。
在職老齢年金は、定額部分と報酬比例部分に分かれています。
定額部分はとっくの昔に65歳支給になっています。そして、今度は報酬比例部分までが徐々に65歳支給に繰り上がっていくのです。
従来からの“年金併用型賃金”が通用しない時代に
高齢者は、賃金が低い人が多くいました。たとえば月額15万円だったりしていました。そのような賃金は、別途に年金が出ることを想定した“年金併用型”の賃金だったと思います。
年金が60歳から支給されなくなった以上、そのような“年金併用型”の賃金は前提から崩れてしまいました。
高齢者を3つの層に区分して賃金を決める
北見昌朗は、高齢者の賃金の決め方を検討する場合は、高齢者を3つの層に区分して考えたいと提案します。その3つとは以下です。
その① バリバリの幹部
その② フツーの社員
その③ イマイチの社員
バリバリの幹部 | モチベーション維持が重要ですから、高齢者になってからも高い賃金を払うものです。だから“年金併用型”の賃金ではありません。 |
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フツーの社員 | 年金や継続雇用給付などを上手に活用しながら、手取りベースで、生活に配慮した賃金決定をしたいものです。だから、今後も“年金併用型”の賃金であり続けます。 |
イマイチの社員 | 継続雇用はするものの、生活の保障まで考えてあげる必要のない人材です。この人に対しては、会社は払えれる賃金しか払えないという、割り切った対応になるでしょう。 |
実際のセミナー「高齢者の賃金の決め方」のすべてをお聴き下さい。
北見昌朗は平成24年9月に「高齢者の賃金の決め方」と題してセミナーを行いました。名古屋中小企業投資育成会社様でのセミナーです。その内容のすべてをユーチューブでご覧いただけます。
セミナー「高齢者の賃金の決め方」で使用したレジュメをダウンロードできます(ただし一部ですが・・・)
- [レジュメの主な構成]
- 65歳雇用義務化が法制化
- 年金が60歳から出ない時代へ
- その① バリバリの幹部
- その② フツーの社員
- その③ イマイチの社員
- 60歳代後半の処遇
- 高齢者の賃金の計算事例